さて、バンドメンバーの航空券を無事に取り終え、出発まであと数週間。
授賞式はアメリカの首都ワシントンDCで開かれる。
そういえば、授賞式で「Heavenly Seven」を演奏することになっているんだった。
その出来具合で「やっぱ、受賞取り消し~」ってわけじゃないけれど、輝かしい会場の中、ジャズ界のスーパースターの目前で演奏するわけだから準備だけはしっかりとしていかないと。
さらには、いつもお世話になっている某ジャズバーのマスターから、
「どうせやるなら、かましてこい!」と特命を受けたので、「特命係長」として(偶然当時の役職も係長)、元々あった曲にイントロをつけて、提出音源にはない僕のソロパートをつけました。
メンバーに集まってもらい、もう一度スタジオ入り、イントロと僕のソロパートを足した"授賞式スペシャル"を作り上げた。
(結果的には授賞式のプログラム上の時間の制約があり、その付け足しバージョンの努力は水泡に帰してしまいましたが。)
その当時の自分の精神状態はどんなだったかというと……
一言で言えば「イケイケドンドン」でした。
サラリーマンなのに、ほぼ初めて書いたオリジナル曲でモンクコンペで最優秀作曲賞を獲ってしまって、舞い上がっていたのでしょうね。「何だってできる」という全能感みたいなものが芽生えていたようです。授賞式参加ツアーはかなりの強行日程を組んでしまいました。どうせなら、この機会をフルに生かして、遊び倒してしまおうと。
しかも、せっかくなので、ワシントンDCから450km離れたNYで、ちょっと現地のジャズを堪能してからのワシントン入りを画策しました。
こうして、‟モンスターツアーコンダクター”が誕生し、超強行日程の‟授賞式参加ツアー”は幕を開ける。
まず大変だったのが、メンバー3人の有給の取れ方がバラバラで、渡米の日程が一日ずつずれてしまったこと。
まず僕(モンスター)が一番乗りで渡米した。
その飛行機代はモンク委員会が出してくれるのですが、もちろんワシントンDCと日本の往復チケット。NYで遊ぶという計画だったので、モンスターは成田からワシントンDCに着いた足で、その日のうちにNYの東部に位置するロングアイランドまでレンタカーで移動。
機内ではろくすっぽ眠れなかった上での450km(だいたい東京~京都間ぐらい)の強行運転はキツかったなぁ。さすがに途中で眠すぎて事故りそうだったので、フリーウェイから一旦降りて仮眠をとる。
この数日後にはまた同じ道のりを爆走するという鬼のツアコン魂を見せるのであった。しかも授賞式のリハーサルの当日に。
モンスターが到着した翌日に、ドラムのカテキン君がJFK空港に降り立つ。カテキン君も疲れていたので、その日はホテルで休息。
翌々日は、カテキン君と二人でマンハッタンに繰り出す。
一旦解散して、また夜集合することにした。
僕は、当時働いていた会社の本社がウォール街にあったので、部署内の一番のお偉い方と落ち合ってハンバーガーをおごってもらったり、社内を案内してもらったりした。
そして午後は、その前に勤めていた会社があったコネチカットまで電車で移動。
もう辞めた会社だったのに、5、6人集ってくれてありがたくも熱烈に歓迎してくれました。
電車で再びマンハッタンに戻り、カテキン君と合流。一緒にNYのジャズの老舗「Smalls~スモールズ~」に遊びに行く。
その店は毎晩ジャムセッションをやっているので、僕らは一曲ずつ飛び入りで参加した。
カテキン君は日本でもジャムセッションホストをやっているので、軽快にスウィングしていましたが、僕はもともとジャムセッションが苦手(今でも苦手)なので、惨敗。
しかもNYでとり上げるセッションの曲って、全然耳馴染みがない。普通に枯葉(Autumn Leaves)とかやってくれればよかったのになぁ。せっかく秋だったのに。
4日目にしてベースの美咲ちゃんがJFK空港に到着。カテキン君と二人で迎えに行って、やっとトリオが揃いましたよ。
美咲ちゃんがタフネスを見せた為、着いたその晩にNYのブルーノートに遊びに行った。
その日はちょうど、上原ひろみとスタンリー・クラークのデュオ。
グラミーをとって、ノリに乗ってる二人のライブでした。
そしてその翌日は、NYでスタジオをレンタルして、
授賞式の「リハーサルのためのリハーサル」(なんのこっちゃ)をした。
夕方から夜にかけて、美咲ちゃんとカテキン君は、再びNYのジャズを堪能。
一方僕はというと、その後に控えているNYとワシントンDC間の強硬ドライブに力を残すために、車の中で仮眠。(どんだけ車中で仮眠を摂る旅だ。)
23時ぐらいにまた合流して、いざワシントンDCへ!
道中はお二人に日本から持ってきてもらったCDを聴きながら向かった。
ぎゅうぎゅうのスケジュールが祟って、極度の体力低下を発症。
運転中何度も落ちかけた。
そんな僕に気づいた美咲ちゃんが、
「CD変えましょうか?」と優しい言葉をかけてくれて、おじさんドライバーは女子力の励ましにより、なんとか睡魔に勝利できました。
いやー、音楽って本当にいいもんですね~(水野晴郎風)。
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