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  • Y. Nakamura

オールスターコンサートからの~

3人のドラマー達の熱い闘いを観た後、自分たちの受賞曲の演奏も無事終わり、“ツーリスト・トリオ”は一観客と化しました。演奏の緊張から解放された僕たちは、世界のトップジャズミュージシャンの豪華共演の演奏に身を委ねることに。

モンク委員会がとても気を遣ってくださったおかげで、“ツーリスト・トリオ”は特等席でした。ゲストによる言わばオールスターコンサートを、じっくり堪能。

ハービー・ハンコックやウェイン・ショーターはもちろん素晴らしかったのですが、個性の違う二人のヴォーカリストが特に印象に残っています。

まず、アレサ・フランクリン。

秋に聴く「My Funny Valentine」もなかなか良いもので、そのド迫力の歌声に度肝を抜かれました。

そして快く相席を許してくださった グレッチェン・パーラト。

空気の中にとろけてゆく、そんな甘い歌声に完全にノックアウトされました。

あれからずっとお慕い申し上げております。

オールスターコンサートのトリは、マデレーン・オルブライト元国務長官のドラム演奏。

アメリカ国防の最前線に立って指揮を執っていたとは思えないほど、とてもチャーミングなドラミングをされていました。

コンサート後に挨拶がてら少しお話させていただきました。

「オルブライトさん、あなたの業績を記念して建てられたコンサートホールが日本の宮崎というところにあるんですよ。」

「そのようですね。うかがったことがあります。」

一緒に写真も撮らせてくださり、とても気さくで素敵な方でした。

オールスターコンサート後に、ケネディセンターの中をウロウロしていると、何人かのオーディエンスに、

「作曲賞の人でしょ?ぜひサインしてください」

と、人生で初めてのサインリクエスト。なにせ初めての経験でどんなサインをしたかも憶えていないが、厚手で素敵な授賞式のプログラムには、僕のプロフィール写真もデカデカと載っているので、その横にサインを。

「とても良かったよ!アレサの次に良かった!」(と大賛辞を頂いたが、かなり畏れ多い。)

一通りサインを終えると、次はお楽しみの「打ち上げ」。

といっても居酒屋に雪崩れ込むわけじゃありません。

ケネディセンターの最上階。素敵なテラスのあるダイニングホールでの立食ディナーパーティー。

“ジャズ界銀河系軍団”とのパーティーって、どんだけのものになるのかと胸躍らせ臨んだが、ここで悲劇が起こる……

パーティーが始まるや否や、とあるジャズ系のジャーナリストの方からインタビューの依頼が。“銀河系軍団”との語らいも、目の前に広がる豪華な食事もしばしオアズケになるけれど、断るわけにもいかないので、僕は空きっ腹のままビール片手にそのインタビューに応じました。

その間カテキン君は、さまざまなスーパースターと記念写真を撮っていたようです。

やるなぁ。いいなぁ。

大ホールでの演奏の後、疲れもあったのでそのジャーナリストの方からの質問は断片的にしか憶えていないものの、たしか日本のジャズ事情について聞かれたかと。

どのくらいの時間をインタビューに費やしたのだろう。そうこうしているうちに、周りはいつのまにかお開きムードになっていた。

記念写真に、豪華な食事……

いや別に全然いいんですよ。インタビューに応えるのも受賞者としての責任ですから……

けどね……

“銀河系軍団”との豪華な食事と引き換えにしたそのインタビューが、その後どこかで記事になったという話を一切聞くことはなかったのです。

何のために話したのやら。

食べ物の恨みは残るって本当ですね。

僕はほとんど何も食さないまま、送迎シャトルバスに乗り込みホテルへ。

美咲ちゃんとカテキン君とはホテルでお別れ。

名残惜しくも“モンスター・ツアー・コンダクター”の任務はここで終了。

部屋に戻り、おひとりさま二次会。

極度の緊張から解放され、実態のよくわからないインタビューのおかげで空腹のままウイスキーを飲んだ。

いつになくやたら酔いが回る。

ちょっと飲み進めると、「これはヤバイぞ」と思えてきた……

世界で由緒ある作曲賞を授賞したサラリーマンは、

輝かしい授賞式の夜、一人寂しくリバース。

ワシントンDCで最高級ホテルのバスルームを汚してしまったのでありました。

~完~